TBSラジオ『アフター6ジャンクション』
2020年10月27日放送「ビヨンド・ザ・カルチャー」
パーソナリティ : 宇多丸
パートナー : 宇垣美里
ゲスト : 王谷晶


TBSラジオの番組『アフター6ジャンクション』の「ビヨンド・ザ・カルチャー」で王谷晶さんが「今こそ触れたいシスターフッドな作品」について話されていました。


宇垣美里 王谷晶さん推薦、今こそ触れたいシスターフッドな作品。

宇多丸 ここからは王谷さんおすすめの最近のシスターフッドなエンタメ作品を時間の許す限り伺っていこうと思います。まずはお好きだという映画編。おすすめのシスターフッド映画何でしょうか?

王谷晶 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。
こちらはDCコミックスが原作のヒーロー映画『スーサイド・スクワッド』に登場して人気を集めましたマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインが主役のアクション映画。悪のカリスマ、ジョーカーと別れ、全ての束縛から解放されて覚醒したハーレイ・クインが、新たな最強チームを結成し、最後の敵ブラックマスクと戦う、という作品になっています。

宇多丸 はい。ってことで先ほどから何度も出ておりますが、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。改めてシスターフッド的な魅力、どの部分でしょうか?

王谷晶 バラバラの女の人、しかもムチャクチャな性格の女の人ばっかり集まって、もちろん主役のハーレイ・クインもメチャクチャな女の子でそれの仲間になるのもかなり一筋縄ではいかない女性ばかりで、ベタベタ仲良くなったりしないで同じ目的で仕方なく共闘するみたいなのがかっこよく見えました。

宇多丸 確かにそこまでベタベタ仲良しじゃないですよね。最終的になるチームと私は加わんないっていうのがいたりね。

王谷晶 そうですね。

宇多丸 あと、今回の『ババヤガの夜』もそうですけど、アクションものとして、僕やっぱりアクション・シーンすごいいいなと思ってて。

王谷晶 本当にこれ、アクションの振り付けが素晴らしいと思って、マーゴット・ロビーなんか結構、女性的なスラッとしたタイプの女優さんですけど、それが大男を殴り飛ばすのにちゃんと説得力のあるように見える振付をされていて、これは女性アクションの新しい傑作だなと思って感動して観ました。

宇多丸 そこもすごい良かったっすよね。これはだから、それこそコロナ禍が一番食らっちゃった時期の大作でもあって。

王谷晶 そうですね。

宇多丸 これも時期が時期ならもっとね、興行収入とかもあれだったでしょうけど。全然観やすいんで、宇垣さん、もう最高なんで。

宇垣美里 これまだ見てないので、ちょっと見ます。今日帰って見ます。

宇多丸 宇垣さん、ハーレイ・クイン・ルックしだすと思いますよ。

宇垣美里 絶対好きなんだもん!わかってるんだもん、だって!

宇多丸 ということで映画編は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』おすすめいただきました。続いては、音楽編。シスターフッドな音楽。

王谷晶 はい。高知県出身の女性四人組のバンドでsympathyというバンドがあるんですけれども、私密かに・・・密かにじゃないんですけど、今すごいファンで、特にシスターフッド売りをご本人たちがされてるわけではないんですけれども、四人組のミュージック・ビデオとかの佇まいがものすごくかっこよくて。あと歌詞の世界なんかも勝手にシスターフッドの印象を見出してしまって、聴いていると、女子高だったんですけど、女子高時代に戻ってしまうようなそんな感じの青春をちょっと感じさせるバンドですごく好きなんです。

宇多丸 はい、sympathy。

宇垣美里 今、BGMに流れているのがsympathyの「SNS」という曲で、2017年のメジャーデビューアルバム『海鳴りと絶景』に収録されている曲となっています。

宇多丸 ひょっとしたら、僕はレーベルメイトですかね、これはね。というね、ライムスターとも同じレーベルでございます。といった辺りでsympathy。歌詞とかもちょっと噛み締めて聴いてみたいな、これね。

宇垣美里 聴いてみよう。

宇多丸 ちょっと駆け足になってまいりましたが。続いて、マンガ編。おすすめのシスターフッドなマンガ。

王谷晶 平庫ワカさんの『マイ・ブロークン・マリコ』

宇多丸 出た!

宇垣美里 サイコー!
友達のマリコが死んだ。突然の死だった。柄の悪いOLのシイノは、彼女の死を知り、ある行動を決意した。女同士の魂の結びつきを描く、鮮烈なロマンシス・ストーリー。

宇多丸 スカート澤部渡さんがおすすめマンガで以前この番組ではすすめていただきましたけども、『マイ・ブロークン・マリコ』。宇垣さんも大好き?

宇垣美里 最高。もう鋼のようなシスターフッドといっても正にいいと思います。

王谷晶 これはもうすごい作品です。特に好きなのが・・・好きというか、感動したところが亡くなってしまったマリコの背景なども描写されてるんですけれども、悲惨なんですけど、それをかわいそう萌え的に描いていないところ、痛みをただ痛みとして表現しているところがすごい信頼できる視線で素晴らしいなっていう。

宇多丸 “かわいそう消費”というか・・・そういうことしていないですもんね。

宇垣美里 いい思い出にしないというか。

王谷晶 そうですね。そこが好きです。

宇多丸 すごいハードボイルドなんだよね、これね。

宇垣美里 「お前の骨だけは拾ってやる」みたいな感じがすごくいいですよね。

王谷晶 あれはすごく感動しました。

宇多丸 あと、これも核心に迫るところがあれだけど、シスターフッドの二人の一番大事なところは僕らは見えないっていうか、僕らは知らないっていうか・・・。

宇垣美里 見なくていい。

宇多丸 ・・・っていう、あれがすごく一本、線をきっちり引いた矜持っていうか、そこも素敵だなと思ったんですよね。

王谷晶 もう続編が許されない、本当にガチッと完成された物語で強い物語だと思いました。

宇多丸 やはりとんでもない作品『マイ・ブロークン・マリコ』。

宇垣美里 最高です。

宇多丸 続いては、小説編。おすすめのシスターフッド小説。

王谷晶 チョ・ナムジュさん著の『彼女の名前は』という作品です。

宇多丸 はい、チョ・ナムジュさん。

宇垣美里 『82年生まれ、キム・ジヨン』の作者の方ですね。
チョ・ナムジュさん。この方が手がけた新作小説は60人余りの女性のインタビューを元に書かれた28編からなる短編集。暮らしの中で感じる不条理に声を上げ、自分だけではなく次の人のために立ち上がる女性たちのストーリー。

宇多丸 はい。ということで『82年生まれ、キム・ジヨン』も素晴らしかったですけど。

宇垣美里 力のある作品でしたけれども。

宇多丸 そのチョ・ナムジュさんですから、それは良かろうなとは思っていたんですが、なんとそういうあれなんですね、28編。違う年齢、違う立場の女性たちってことですかね。

王谷晶 そうですね。下は九歳から上は六十九歳まで、すごくたくさんの女性にインタビューをして書いたっていう、その成り立ちからしてちょっとシスターフッドを感じるなと思いまして。

宇垣美里 これまた、次の人のために立ち上がるっていうのがすごくいいなって。

王谷晶 そうですね。全体的につらい話も多いんですけど、やっぱり下の世代とか他の人に同じ思いをさせたくないっていう強い願いが込められていて、結構泣きながら読みましたね、わかると思って。

宇多丸 『82年生まれ、キム・ジヨン』、特に映画版の方はお母さんさん側が自分と同じ思いだけはさせたくないって。『はちどり』って映画でもあったしね。各世代もやっぱ分断されちゃったとこがこういった形で大きくシスターフッドというくくりの中で声を上げて、つながり得るっていうかね。正に作品自体がそうなんですね、『彼女の名前は』。

王谷晶 そうですね。

宇垣美里 読まねば。

宇多丸 そして、ちょっと駆け足になって参りましたが申し訳ありません。最後はアニメ編です。おすすめのシスターフッドのアニメ。

王谷晶 Netflixで配信している『トゥカ&バーティー』というアニメです。

宇垣美里 これ、私、大好き。メチャメチャいいんですけど
鳥を擬人化したキャラクターたちが登場するアダルトアニメ作品。コメディアンのティファニー・ハディッシュとアリ・ウォンを声優に迎え、それぞれオオハシとウタツグミ、鳥ですね、鳥の三十歳の女性が幸せを求めて生きる姿を描いています。2019年よりNetflixで配信中です。

宇多丸 これは『ボージャック・ホースマン』の?

王谷晶 そうです。同じクリエイターで。

宇多丸 『ボージャック・ホースマン』すごい好きなんですけど、これ見てなかったけど、おもしろい?

王谷晶 これはおもしろいです。

宇垣美里 最高ですよね。

宇多丸 あっ、本当?

宇垣美里 絵のおもしろさはもちろんあるんですけど、女性がきっと感じたこと一度はあるよねっていう不条理に対する、バチバチに殴っていく感じの作品で気持ちがいいんですよ、とにかく。

王谷晶 友情がやっぱり、最後は友だちっていいよねって感じにちゃんとなるので。

宇垣美里 「私の親友が・・・」っていう感じで。

宇多丸 当然、『ボージャック・ホースマン』のあの感じだから、相当皮肉なんでしょうし。

王谷晶 そうですね。ただ、『ボージャック・ホースマン』よりは希望の持てる、明るい感じの作風にはなってると思います。

宇多丸 『ボージャック・ホースマン』は時代にちょっと遅れちゃったおじさんが何とか戸惑いながら、傷つきながらも・・・って話だから、それはちょっとションボリするんですよ。そうか、同じあれだった『トゥカ&バーティ』。

宇垣美里 セクハラされて、右の胸が逃げ出しちゃうんですよ。最悪の気分だから、お酒でも飲みに行くかって、胸が無くなっちゃうみたいな。

王谷晶 本当にはずれて体から逃げていってしまうんですよ、おっぱいが。

宇垣美里 穴が空いてんです。おもしろいです。

宇多丸 でも、やっぱりそこはちゃんと意識が、ちゃんとメッセージというか、あってのあれですもんね。

宇垣美里 風刺がすごい。

宇多丸 『トゥカ&バーティ』、Netflixで観れますっていう感じですかね。他にもいろいろご用意いただいてたんですけど、ちょっと付け足すとしたら何かありますか、王谷さん。

王谷晶 そうですね。ちょうど来年、映画版も公開されるので、山内マリコ先生の『あのこは貴族』って小説。こちらは生まれながらのお嬢様と地方から出てきた女性の二人の目線で語られるお話で、最初は女性の対立の話なのかなと思って読んでるとすごくシスターフッド的なところに収束されていくっていうおもしろい小説で、是非映画公開前に読んでいただければと。

宇多丸 山内マリコ先生、間違いない。

宇垣美里 この作品、大好き。

宇多丸 今日、王谷さんのお話を伺ってると一つ、これまでは分断されてて、違う場所にいて、なんなら男性に都合がいい対立構図みたいな、勝手に押し込められてた人たちがその虚構性に立ち上がってるっていうか、声を上げてるっていうか、それは全体としてはっきり流れとしてありますね、これね。

王谷晶 はい。

宇多丸 でもそれによって何か新しい・・・新しいというか、より良い物語が生まれるのだからっていうか。そういうところに僕はもちろん男性側ですけども、希望を見ますけども。

王谷晶 もっといろんな種類の女の人同士の話がこれからもたくさん生まれればいいなと思ってます。

宇多丸 それによって豊かな作品が生まれれば素晴らしいですし、女性も気分良くなる・・・。

宇垣美里 それで元気をもらえて。

宇多丸 いろんな作品で描かれれますけど、ああいう拡張性システムあるいは『ババヤガの夜』のヤクザたちもそうですけど、男ゴリゴリ社会・・・全然こっちはこっちで楽しくないんで、みんないい感じって、目指していければ。

宇垣美里 そうですよね。そこから解放されるって多分、全員が幸せなことだと思う。

宇多丸 みんな何かヤダなって思ってる部分が本当にあったりするっていう。といった辺りで王谷さんありがとうございます。

王谷晶 ありがとうございます。

宇多丸 ちょっとお時間近づいてまいりましたが、最後まとめに行きたいんですけども。これからシスターフッドな作品どうなっていくっていう、まずご自身どうですか?ご自身はどういう作品を。

王谷晶 そうですね。もっと中年女性の話というのはやっぱり少ないなと感じるので、自分は中年・・・おばさんと言われるような世代の人の話なんかを書いていきたいなと思うのと、あとそろそろ本腰入れて、女の人同士の真面目なラブロマンスを正面から書きたいなっていうのが今後の予定です。

宇多丸 ああ・・・やっぱり日本だとまだ全然少ないですかね、それね。

王谷晶 自分が本当にただ書きたかっただけで。

宇多丸 でもそれはそれで自然にそれが書かれて当たり前、本来はね。自然に書かれるべきことですもんね、それね。あと、今おっしゃってた中年女性のあれっていうと、例えばハリウッド女優とかもある程度年齢になってくると役がなかなかもらえなくなってきて、シャロン・ストーンかな?とかが前言ってて。でもそれに対して、実はアンケートに書いていただいたニコール・キッドマン『ストレイ・ドッグ』、正にハードボイルド。

王谷晶 ちょうど今、先週ぐらいから公開中で、まだ観てないんですけど、すごく楽しみで。

宇多丸 正に女性が主人公のハードボイルドって意味では『ババヤガの夜』ともそこもシンクロするちゃあシンクロする感じですよね。

王谷晶 はい。

宇多丸 あと、世の中的にも今後は増えていくし、気持ちとしてはもっと増えていってほしいって感じですかね。

王谷晶 そうですね。女性同士のいろんな物語が増えていけば男性女性の話も、男性同士の話ももっといろいろバリエーションが豊かになってくるんじゃないかなと個人的には思ってます

宇多丸 本当そうですよね。

宇垣美里 全ての底上げをね。

宇多丸 本当に描かれる世界が豊かになるっていうか、より本当に近づくっていうか、ことでもあるわけだから。とにかく、誰も損しない。

宇垣美里 本当にそう。

宇多丸 サイコーってことです。サイコーであるってことです。


■映画
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
(2020年)

https://wwws.warnerbros.co.jp/harleyquinn-movie/
83b9d1ad049210c6


■sympathy
「SNS」
(アルバム『海鳴りと絶景』収録 2017年)
https://www.sympathy-yureru.com/discography/?id=1
81KAJmw2sXL._AC_SL1500_


■平庫ワカ
『マイ・ブロークン・マリコ』
( KADOKAWA 1996年)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321908000317/
81BxFub-9cL


■チョ・ナムジュ
『彼女の名前は』
( 筑摩書房 小山内園子訳 2020年)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480832153/
61vko30xTmL


■Netflixアニメ
『トゥカ&バーティー』
(2019年)
https://www.netflix.com/title/80198137
435751


■山内マリコ
『あのこは貴族』
(2020年)
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-771017-5
71Z+RnvAaxL


■映画
『ストレイ・ドッグ』
(2020年)
https://destroyer.jp/sp/
f022eb7e7694078a