TBSラジオ『アフター6ジャンクション』
2021年02月23日放送「カルチャー・トーク」より
パーソナリティ : 宇多丸
パートナー : 宇垣美里
ゲスト : トミヤマユキコ


TBSラジオの番組『アフター6ジャンクション』「カルチャー・トーク」でトミヤマユキコさんが赤坂アカ、横槍メンゴ『【推しの子】』について話されていました。


■赤坂アカ、横槍メンゴ
『【推しの子】』
(集英社 2020年)
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-891650-7
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宇多丸 さあ、もう一作お願いします。

トミヤマユキコ では次は赤坂アカ先生と横槍メンゴ先生による『【推しの子】』という作品をご紹介します。

宇垣美里 (拍手)ワーイ。

トミヤマユキコ オタクが推すやつで。

宇多丸 これは宇垣さんは元々・・・。

宇垣美里 大好きです。

宇多丸 『ヤングジャンプ』に連載中・・・さすがっすねえ。僕もこのタイミングで読んでメチャメチャおもしろい。とんでもない話ですけどね。

トミヤマユキコ ・・・。

宇垣美里 これは私、アプリでずっと読んでました。

宇多丸 とんでもない話を考えると思うけど。

トミヤマユキコ そうですね。主人公は地方都市で産婦人科をやっているゴロー君という青年です。ある日、彼の所にお忍びで現役アイドルのアイちゃんがやってきます。人気急上昇中のアイちゃんは誰にも知られることなく子供を出産しようとしてる。この辺りから既にスキャンダラスな感じなんですけれどもね。ゴローは主治医としてこれに協力することになりますが内心、気が気ではない。なぜならアイはゴローの推しだから・・・。自分の病院に推しが来ちゃった。妊娠してる。どうしようというところから始まります。推しの妊娠に驚きながらも主治医としてアイを助けようとするゴロー青年ですがアイにはすごい凶悪なストーカーというのがいまして、ゴローさんもこのストーカーにつけ狙われて、物語開始早々、命を落としてしまいます。そして、次にゴローが気がついた時には彼はなぜかアイの産んだ子ども愛久愛海(アクアマリン)に生まれ変わっていたのでして・・・。

宇多丸 とんでもない話ですよ。

宇垣美里 ねえ。

宇多丸 しかもこれが双子で、もう一人妹がいて・・・。

宇垣美里 瑠美衣(ルビー)がね。

宇多丸 彼女もまた・・・あれ?彼女また転生っぽいぞと。

トミヤマユキコ そうですね。とある事情から亡くならざるえなくなって、アイの子どもとして転生してきてるので、双子が両方ともアイのファンだった・・・。

宇垣美里 強烈な推しという。

宇多丸 いやあ・・・これ、一歩間違えればものスゴイ気持ち悪い話になりかねないところだけど、これがちょっと意外な方っていうか。

宇垣美里 すごくサスペンスですよね。

トミヤマユキコ 普通だと男の子が女の推してた子どもに生まれて、「キャッキャ、ウフフ」するみたいなコメディーになんのかなと思って読んでるんだけど、そうじゃないですよね。アクア君・・・アクアマリン君=通称アクア君はそのストーカー殺人鬼に殺されて転生してるわけですけど、その事件を追っていくうちに「単独犯じゃないだろう」と。「裏で操っている人物がいるに違いない」と。「自分を殺した人物は実行犯にすぎない」ということを考えるようになりまして、真犯人と母親の関係を探るべく役者の卵として芸能界に潜り込むことになると。

宇多丸 そしたら、ここからまたちょっとある種、芸能界・・・現在の芸能界内幕モノとしてもメチャメチャおもしろくて、恋愛リアリティショーの話とかメチャメチャ今の話だし、おもしろいんだなあ。

トミヤマユキコ 恋愛リアリティショーに若い男の子が出演するっていうことでどういうメリット・デメリットがあるかとか、炎上するとか、叩かれるとか、結構リアルな話が出てきたりとか。双子の妹ルビーちゃんもママと同じアイドルになりたいということでいわゆる地下アイドル活動みたいなところから始めていくので、アイドルの給料ってどういう風な仕組みになってるのみたいな。

宇多丸 本当に。あと、かつて、ちょっとライバル的だった天才子役とまたバディ化してくっていうか、その辺もすげえ良くて。

トミヤマユキコ 小さい時から芸能界にいる子たちが背負ってる大変さとか、あまりにも若い時に売れ過ぎて、いまだに若いはずなのにキャリアが萎んできてるって思う焦りとか、あとは堀越学園を想定させるような芸能人学校が・・・

宇垣美里 華やか。

トミヤマユキコ 「いろんな人いるよね」みたいな話とか結構リアルなというか、取材なさってるんだろうないうような芸能界の話が具体的にも出てくるので

宇多丸 内幕モノとしても普通におもしろいんですよね。あと、やっつけで作ったようなあんまりクオリティ的には期待できない原作モノ実写ドラマなんだけど、そのクオリティを底上げする、自分にできることをするために個々が何をするとか、「そうか!」って、みんなでも作ってるもんだし、こういうこと全然あるだろうなみたいな。結果、最終回だけはちょっとクオリティ上がりました、みたいな。本当おもしれえと思って。

トミヤマユキコ 芸能界の内側というのか、ちょっと体感させてくれるようなものになっていると。なので、芸能界という名の異世界に転生してきた人物の話として読めるということなんですよね。

宇垣美里 なるほど。

宇多丸 そうか、そうか。転生して、スターの子どもでもあるからいろいろ才能も受け継いではいるけれども、宿命も受け継いでる。

トミヤマユキコ そうそう、そうなんです。

宇多丸 なるほどね。

トミヤマユキコ 前世の記憶もある程度あるし、ゴロー君は元々お医者さんなので頭もすごく良かったりするんですけど、生き馬の目を抜く芸能界ではチートとしてはやや弱いと。自分で何とかしなくちゃいけない部分もあって、というところで「芸能界という異世界に転生するとどうなるか」っていう話としてメチャおもしろいなと思って。

宇垣美里 そういう意味の異世界転生・・・。

トミヤマユキコ 魔法も何にもないんですけど、でも冒険の物語だし、サスペンスだし。

宇多丸 あと、それぞれがやっぱり持てる能力を活かして、みんなそれぞれ必死にサバイブしてる様が・・・結局すごいみんながんばってて、「みんながんばってるよなあ」って気持ちにもなってきて、芸能界のみなさんを本当に応援したくなる気持ちも湧いてくる。

トミヤマユキコ 推したい気持ちになってくる、みたいな。

宇多丸 いやあ、これ、おもしろかった。これ、まだ全然続きますもんね。これまだ3巻で、単行本で。

トミヤマユキコ むしろ、ここからがですよね、宇垣さん。

宇垣美里 本当、そうなんですよ、もう。楽しみで仕方がありません。

トミヤマユキコ わかります。

宇垣美里 元々、だって赤坂アカさんと横槍メンゴさん・・・「もう約束されている」みたいな感じだったので。

宇多丸 赤坂アカさんは同時連載なんですね、『ヤングジャンプ』で『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』とね。スゴイなあ。

トミヤマユキコ 恐ろしい才能ですよ。

宇多丸 今、ノリにノってるって感じなんでしょうね、やっぱね。

トミヤマユキコ だと思いますね。

宇多丸 これ、メチャメチャおもしろかった。『【推しの子】』でございます。ということで、じゃあ今後もちょっと転生モノ・・・「転生モノ、飽きた」って言ってるけど、「実は今こそおもろいのきてるかもよ」というような視点で見てみるといいかなという感じですかね。

トミヤマユキコ ベタからメタへ、ですので楽しんでいきましょう。


■赤坂アカ
『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』
(集英社 2020年)
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-890432-0
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